CDラジカセを改造して外部コントローラによる制御を実現

初出:2007/07/03 T.Shirai
更新:2007/10/27 T.Shirai

 H19年度の4M創造工学のテーマも「高専祭に来てくれた人々に楽しんで貰える」(1)卓上体感ゲーム機,(2)大道芸ロボット,の設計・製作・実演です.特にゲーム機を設計しているチームの中には,シチュエーションに応じてさまざまな効果音を出したいという要望をもつチームが毎年1,2班あります.そこで市販のCDラジカセを改造し,PLC(シーケンサ)などの外部機器からCDラジカセを制御可能とするシステムをお遊び気分で製作しました.中古のCDラジカセ(特にダイレクト選曲可能な操作ボタンを持つ物)を購入し,操作ボタンの端子をフラットケーブルで外部へ引っ張り出します.さまざまな効果音を焼いたCD-Rを用意し,状況に応じて選曲ボタンをリレーでOnすることで自由なタイミングで効果音を再生します.

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これが最初に購入したダブルカセット搭載のCDラジカセ(送料込み3,000円).バブル時代のT社製豪華CDラジカセ(通称バブカセと言うらしい).なんとなく学生の頃に使っていたCDラジカセに似ていて懐かしい.ただ,こちらは時代が古いせいか,CD−Rを再生できませんでした.メディアを選べば再生できるという情報もあるので,予備として確保.

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こちらが今回改造を行なったS社製CDラジカセ.T社製と比べて小型である.それでもフロントパネルにダイレクト選曲用ボタンがあります.カセットデッキは一つだけです.もちろん,CD-Rも再生可能.構造も非常にコンパクトなので分解も楽でした.

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非常に簡単に上部構造がCDのユニットごと取り外すことができます.

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こちらが取り外した上部構造.裏面から見ています.スイッチパネルの基板も都合よく露出しています.本体とは2つのフレキケーブルと1本のコネクタケーブルのみです.

[操作ボタンの改造]

(1)再生/停止等
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これが再生/一時停止,早戻し(曲戻し),早送り(曲送り),停止SWです.いま気付きましたが,”CD-R/RW PLAYBACK"ということは,CD-Rだけでなく,CD-RWも再生できそうな感じです.

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裏側(基板面)はこのような感じです.タクトスイッチが基板上に搭載されており,表面実装基板ではないので,裏側に2本の足(a1接点)が出ています.ランドの面積も比較的広いので手作業での改造は容易でした.鉛フリーハンダを使っているかも知れませんし,表面に保護剤も塗布されていると思うので,液体フラックスを塗布した後に配線を追加しました.操作スイッチ4個とGNDの合わせて5本の配線(フラットケーブル)を配線しました.

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気を付けなくてはならないのは,いくら細いフラットケーブルとはいえ,後から追加した配線ですので,筐体を組み直した際に干渉して押しつぶされたり,高熱を発する部品の近くを通して溶融→短絡→焼損,といった事態が生じないようにハーネスを通す経路を考えなくてはならない.この計画を立てる,資料を作成するのにジックリと時間を掛ける(この辺は経験がものを言う).

(2)ダイレクト選曲
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これがダイレクト選曲用のボタン.いまどきのCDラジカセにはこの操作ボタンが付いていません.本当に貴重な物に偶然,出会えました.

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これが裏面.同じくタクトスイッチの足が基板面に出ているので作業は楽です.ただし,スイッチの数が11個あります.さらにテスターでグランドのチェックを行なったところ,11個全てのグランドが導通しているようなのだが,パターンを目で追っても,1個のスイッチのグランドだけが分離しているように見える.両面基板なので裏側で繫がっている? ちょっと不安です.

ちなみに各スイッチの端子2本のうちの1本は共通グランドに繫がっているのは良いとして,もう一方の足はお互いに抵抗器を介して接続されています.これはもしかしてダラー抵抗型のD/A変換回路になっているのかな? だとしたらグランド,グランドといっているけれど,実は基準電圧なのかも知れません.デジタル入力だと11配線必要ですが,アナログ電圧変換を行なえば基準電圧と合わせて2本の配線だけで済みます.細いフレキケーブルで本体基板と接続されていることから考えても納得できる設計です.

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スイッチ11個+グランド2本の合計13本の配線を追加した状態です.この基板周辺は空間にゆとりが無いので,配線の取り回しにかなり苦労しました.

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隙間に配線を通し,最短の長さ(+αのゆとり)で計画的に配線を行ないました.

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配線追加作業の完了です.後はこの上部構造を本体に組み直します.

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本体後部のスリット(幅が足りないので弓ノコの刃で広げる)からフラットケーブル(18芯)を本体外に引き出して完了.

CD-Rをセットし,各信号線をグランドとショートさせると,操作ボタンを押さないでもCDの再生をコントロールできることを確認しました.もちろん,本体のスイッチも元と同じく機能することを確認しています.ただ,液晶表示がちょっとおかしいですねぇ.でも,液晶の基板は今回取り外した上部構造ではなく本体筐体側にあるので,今回の改造が原因ではないと思います.それで安かったのかな?

後はフラットケーブルの先端に中継用フラットケーブルコネクタを取り付ける必要がありますね.
実際に使用する際にはリレー出力のPLCを使用するか,あるいはリミットスイッチや押ボタンスイッチなどで操作するように配線するだけです.色々と使い回しができそうだ.

所要時間は約4時間.途中で学生の相談に乗ったりしていたので実質は3時間くらい?

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配線の導通チェック時のメモ.

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