<最近読んだ本> 

(2002年12月より前)

[2002-09]
・「催眠 - hypnosis」 松岡圭祐 (小学館文庫, ISBN4-09-403251-7,1999年)

[2002-08]
・「私は闘う」 野中広務 (文春文庫,ISBN4-16-760002-1,1999年)

[2002-07]
・「マサチューセッツ工科大学」 フレッド・ハプグッド (新潮文庫, ISBN4-10-215411-6,1998年)
 いわずと知れたMITの成り立ちを多くの実例と共に工学者としての視点から捉えた史記.科学者(Scientist)と工学者(Engineer)の差異が重要なポイントとなる.翻って,日本の大学教育,高専教育は,どこへ向かう(べき)なのかを考える良い教材になります.実践的技術者ってなんでしょうね? そろそろ意見統一したほうが良いのじゃないのかな,なんて偉そうなことを個人的に考えたりしています.学生の皆さんも,「なんせ,えむあいてぃーだからな」と表面だけで捉えずに,その成り立ち(生き残りの為に多くのものを切り捨て,付け足した結果です)を学んでみては如何でしょうか.”使える奴”(優秀な歯車)になるべく頑張りましょう.

[2002-06]
・「マークスの山」 高村 薫 (早川書房,ISBN4-15-203553-6,1993年)
 「マークスの山」の名前を知ったのは崔 洋一(サイ ヨウイチ) 監督(「月はどっちに出ている」'93)が映画化したというニュースを読んだときです.映画は95年に公開されたのですが私は観ていません.高村女史の作品は,他には「神の火」と「黄金を抱いて翔べ」の2作品しか読んでいません.ただ,3作品とも共通しているのは異様なほどに「男臭い」作品であることですね.主人公は根暗でストイックな切れ者で,良くも悪くも真っ直ぐな性格の男達です.これを女性が緻密に描くから面白い.これらの男たち,亭主として好適かと言うと,うーん,ダメですね.さて,本作も高村作品に共通の詳細な調査に基づく社会派ドラマです.趣味の登山に関する知識はもとより,警察・公安その他諸々の駆け引き,脚の引っ張り合いなど,(現実的かどうかの判断は私にはできませんが)飽きさせることなくスムーズに話は展開していきます.うまい.ラストはちょっと急展開し過ぎかな?

[2002-05]
・「わが友 本田宗一郎」 井深 大 (ごま書房,ISBN4-341-12005-0,1991年)

 共に戦後の焼け跡に興した町工場を世界のHONDAとSONYに育て上げた反骨のエンジニア兼カリスマ・ファウンダー,井深 大(まさる)氏(ソニー株式会社)が,1991年8月5日に84歳で逝去された40年来の親友・本田宗一郎(本田技研工業株式会社)との思い出を綴ったもの.ソニーを生んだ井深と盛田昭夫,ホンダを育てた本田と藤沢武夫,皆,20世紀の末に次々と亡くなられた.他人の真似をしない独創性を武器に世界市場で強く戦った両社(両者)は,商売の上で手を組むことは(商品化されなかった一例を除いて)全くなかった.物静かな秀才タイプの井深とネアカな大将の本田は,一見,おかしな取り合わせに見えるかも知れない.というよりも,まず,ソニーが井深と盛田で,ホンダが本田と藤沢であるということ自体,近頃の若者の間では知られていないのかも知れない.実は私も'93年にソニー(株)に入社するまで,創業者や現社長が誰であるか,ということを知らなかった! いけないですねぇ,本当に反省しています.ああ,こういう会社だからこういう製品を作るのか(あるいは作らないのか),ということが良く分かります.
(c.f. 「学歴無用論」,「ソニーの自叙伝」,「本田宗一郎と井深大展」)

[2002-04]
・「黒後家蜘蛛の会 3」 "CASEBOOK  OF  THE  BLACK  WIDOWERS" / アイザック・アシモフ (創元推理文庫)
「あなたは何をもってご自身の存在を正当となさいますか」から始まるゲストの尋問.要するにこの部屋から外には誰も出ません.派手なアクションも血みどろの死体も存在しない.レストランの一室で謎が披露され,議論され,最後にはきちんと(給仕のヘンリーによって)解明されます.科学技術,歴史,その他諸々の雑学の端々まで動員して謎を作り上げるアシモフの力量には脱帽です. 以前に同作1("TALES OF THE BLACK WIDOWERS"),同作2("MORE TALES OF THE BLACK WIDOWERS"),同作5("PUZZLES OF THE BLACK WIDOWERS")を読んでいます.「この世に生きて在る限り,私は<黒後家蜘蛛の会>月例会食の模様を書き留める所存である」(あとがきより抜粋)とありますが,巨匠アシモフは’92年4月6日に72歳で永眠,同作5はその2年前の’90年に刊行されている.つまりあと残るは同作4のみ.

[2002-03]
・「精神と物質」 立花 隆・利根川 進(文春文庫,ISBN4-16-733003-2,1993年)
 副題:分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか
 1987年度ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川教授(MIT)に行った20時間に及ぶインタビューの結果を立花氏が文藝春秋誌に掲載した記事を文庫化したもの.100年に1度の大発見と言われた「トネガワの研究のどこが凄いのか」を分子生物学の基礎知識なしの一般人にも分かりやすく(底を浅くして,ではありません)解説しています.比較的歴史の浅い分子生物学の成り立ちと業績の歴史を(当時の)最先端領域まで網羅すると共に,研究者の資質とは何か,海外と国内の研究環境や歴史の違いなど,深く広く語っています.刊行されてから10年以上経過したため(例えばヒト・ゲノムは解析されていないなど)内容は多少古くなったかも知れませんが,豊富な図版やデータを効果的に用いているため高度な内容にも関わらず非常に分かり易い.何度でも繰り返し読むことができる良書です.
   
[2002-02]
・「ターミナル・マン」 "THE TERMINAL MAN" / マイケル・クライトン(ハヤカワ文庫,ISBN4-15-040692-8,1972年)

 誰でも毎回,最高にイカした作品を書くとは限らない,ということですね...着想は,さすがクライトン,面白いです.初版が'72年ということを見落としてはいけない.しかし,登場人物を生かしきれていない,ストーリーに盛り上がりが足りないなど,中篇程度の内容.

[2002-01]
・「王妃の離婚」          佐藤賢一

 中世ヨーロッパを舞台にした法廷ドラマ.難しいこと抜きに面白く読めます.バレバレの伏線がありますが構いません.

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