[非線形バネSATのページ]

初出:2004/09/18
更新:2006/05/10


(SAT/Stiffness Adjustable Tendon とは?)
(注意) SATは現在,特許公開中です(特願2004-169795).無断での製品への利用はご遠慮下さい.製品化に興味のある企業を探しています.興味のある企業の方は白井までご連絡下さい.
科学技術振興機構 研究成果展開総合データベース J-STORE http://jstore.jst.go.jp/patent/detail/7374.html
テクニカル・アイ http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/techeye/detail.cgi?techeye_id=21&parent=list&footmark=clear


 本研究室で開発した非線形バネ特性を有するまったく新しい構造のバネです.一般的なコイルスプリングは(ほぼ)フックの法則(f=Kx)に従い,バネの変位量と外力の大きさが比例する線形バネです.それに対して,SATは伸びれば伸びるほど剛性が高くなり,最終的には全く伸びなくなるという力学的な特性を持ちます.円柱状の弾性体(シリコーンゴムスポンジ丸紐)の外側を編みチューブで覆っただけのシンプルな構造で,製作するのに特殊な素材・装置を必要としないという特徴を持ちます.

 右のグラフはSATの静特性です.横軸はSATに加えた外力(引っ張り力),縦軸はその際の変位量です.傾きはバネの柔らかさを表します.傾きが緩やかなほど硬いことを意味します.伸び始めは柔らかく,伸びるのに従って硬さが徐々に増えていきます.ちなみに線形バネの場合,この特性は一直線になります.
 SATは,引っ張っる過程と力を抜いて戻す過程とで特性が異なるヒステリシス特性を有します.これは弾性体であるシリコーンゴムスポンジ丸紐の復元速度の遅さに由来しています.
 このSATを右図のように拮抗させて配置したワイヤ動力伝達系を構築すると,左右の2つのモータを用いて,関節の角度・剛性・トルクを制御できます.
 右図の左側のように,それぞれのSATに印加する張力を緩めると関節は柔らかくなります.右側のように左右のモータでワイヤを巻き取ってSATに印加する張力を強めると関節は硬くなります.

(SATを用いた一関節ロボットの制御実験):動画

1.関節剛性の調整: 左右のSATに掛かる張力を緩めたり強めたりすることで,関節剛性が変化することを確認した実験結果.

 mpeg1:2.6MB
2.関節角度制御: 左右のモータを制御することで,関節角度を自由に制御できることを確認した実験結果.映像からは分かりにくいですが,モータドライバの能力の制限等により関節剛性をあまり高くできませんでしたので,位置決め精度はあまり高くありません.実験装置の改良で精度向上を試みる予定です.  mpeg1:3.4MB
3.トルク制御: 関節トルクを一定に保つ実験結果です.前半は関節トルクの目標値をゼロに設定,後半はリンク先端で500gfの接触力を設定.特筆すべきは,トルクセンサを用いず,モータ軸上の2つのポテンショメータと関節部の1つのポテンショメータ,合計3つのポテンショメータのみでトルク制御を実現できている点です.ノイズに強く,安全性の高い力制御系を実現できるため,福祉介護,リハビリ機器など,ヒトと接するロボットの駆動系への応用が期待できます.  mpeg1:7MB


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