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一言 「とうきょうとっきょきょかきょく(2)」

初出: 2006/01/21 T.Shirai
更新: 2006/01/21 T.Shirai

 さて,以前に公開されたと報告した特許「ばね装置」ですが,無事に特許査定されたようです.私はちょっと勘違いして「これで終わり!」と喜んでいたのですが,やはりまだ気が早かったようです.出願→審査→拒絶→意見書提出→審査→特許査定と段階が進んで来たのですが,特許査定とは「審査の結果,審査官が特許を許可した」ことを意味し,この後,特許料を支払うことで特許原簿に掲載されて特許権が発生するそうです.なんだお金を払うだけで良いのかと言うのも早合点で,その後,特許掲載広報に掲載されます.それを読んだ第3者から特許異議申立の受付が始まるそうです.
 特許異議申立とは,要するに”これは特許として認められないよ”と審査官ではなく,第3者から却下の申し立てを行なうことだそうです.その発明に新規性・進歩性が無いことを示す文献と理由書を提出する必要があります.特許掲載広報の発行から6ヶ月以内に異議申立を行なう必要がある.
 もちろん6ヶ月間,くわばらくわばらと息を潜めて待ち続け,特許異議申立が無ければ万事OKという訳ではなく,無効審判の請求を行なうこともできるので,いつまでたっても安心できるものではありません.
(マイクロソフト社が出願して認められた”ウェブブラウザー上でTABキーを押すとリンク先のフォーカスを次々と動かすことができる機能”(だったかな?)の特許も無効審判の結果,却下されたという記憶があります)

 (クリックでPDFを別ウィンドウに表示)

 これがその通知文書なのですが...「この出願については,拒絶の理由を発見しないから,特許査定する」.

(1)”疑わしきは特許査定”
 これは特許の基本原理でして,”明白にクロ”でない限りにおいては特許を認めるという方針だそうです.Amazon社のワンクリック特許にしてもそうですが,「これは特許じゃないでしょう」と審査官を含めて多くの人々が”感じた”としても,新規性・進歩性が無いことを示す明白な文書が証拠として存在しない限りは出願人の主張を認めて審査OKとしなくてはならない.審査官が見落としたり,特許公開後あるいは特許掲載広報発行後に第3者が速やかに証拠を提出しない限りは,特許として認められます.ですから大手企業では特許の広報を毎月大量に特許部門と技術部門に回覧して,自社に不利益かつ拒絶可能な特許をチェックさせています.刑事裁判において”疑わしきは無罪”(推定無罪)とするのとは逆ですね.

(2)”〜だから〜する”
 公式の文書において,時々目にする表現です.ちょっと懐かしい書類ですが,平成12年12月に広島大学大学院工学研究科長に提出した「学位論文審査願」の文面を以下に.
 「貴研究科博士課程後期修了の認定を受けるため、貴学学位規程第4条第1項の規定に基づき、下記関係書類を提出いたしますから審査下さるようお願いします。」
 当初,「提出いたしますから」は変だろうと思い,「提出しますので」と修正したのですが,正式な様式として決まっている文章だから変えてはいけないとのことでした.

 しかし,”で,で,特許は認められたの?”と不安になることしきりな表現です.

 2002年9月に出願書類を作成して即出願した特許ですが,これまでに3年以上要しています.朝日新聞の2006年1月17日の記事に,タイムリーな記事があります.現在,特許の審査に27ヶ月(2年と3ヶ月)を要している審査待ち期間を11ヶ月に短縮することを経済産業省が計画しているそうです.米国20ヶ月,EU22ヶ月.審査官の300人増員,類似特許の審査に民間企業の活用するそうです.現在,国内で審査請求された特許のうち特許化されるのは49.5%.米国では61.2%,EUで55.2%.つまり審査請求しても却下される無駄な出願が多いのも問題らしいです.

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