●マイクロムーバの省配線のヒミツ

初出:2003/09/09 T.Shirai
更新:2003/09/26 T.Shirai

 マイクロムーバは,2つのモータを2つのトグルスイッチ(ニュートラルポジション有りのモーメンタリスイッチ)で正転・逆転・停止させることで,前進・後進・旋回(その場で回転も可)させることができます.さて,一般的にスイッチ(あるいはリレー)を用いてモータを正逆回転させるには,以下の図のような配線を行います.

 M1,M2はモータ,SW1,SW2はトグルスイッチを表しています.トグルスイッチは2つの接点をもつ3ポジション(ニュートラル)のもので,2回路が1つのスイッチに入っている6P(足が6本)のものです.ここでSWをON-OFF-ONさせることで,モータを正転・停止・逆転できる原理を説明するために,モータ1つ分の回路だけ抜き出してみましょう.

 スイッチをOFF(中立)した状態が(a)です.モータ両端は開放されているのでモータは停止(正確には回転フリー)します.(b)のようにスイッチをONすると,モータ上端の端子は正,下端の端子には負の電圧が掛かりますので,モータは回転します.ここで(b)を正転としましょう.今度は(c)のようにスイッチを反対方向のONにすると,モータ上端の端子には負電圧,下端の端子には正の電圧が掛かるので,(b)とは逆方向にモータは回転します.

 上述の回路を2c接点のリレーならばモータ1つに対してリレーを1個,1c接点のリレーならばモータ一つに対してリレーを2個用いればOKです.
 それに対してa接点のリレーや半導体デバイス(トランジスタ,FETなど)を用いる場合は,Hブリッジ回路を用いる方法がメジャーです.非常に有名な回路なのでここでは省略します.

 次はマイクロムーバ用に考案した配線方法です.

 パッと見ただけでもシンプルなのが分かると思います.先ほどの例と同様にモータ1つの場合の回路で原理を示しましょう.

 原理は,モータの1つの端子には常に基準電圧を与え,もう一方の端子に正電圧,負電圧を与えることでモータに逆方向の電位差を与えて駆動していることです.
 さて,モータ2つでも問題は無いのか,洞察力の鋭い方のために以下に示しましょう.

 緑色の線は基準電圧を表しています.赤は緑よりも高い電圧(正電圧),青は緑よりも低い電圧(負電圧)を表しています.
 (a)と(b)ではM1,M2は逆回転をしますが,この時にマイクロムーバは前進・後退するとします(そのようにモータ配線を行います).
したがって(c)と(d)ではM1,M2は同じ方向に回るため,その場で回転します.スイッチ1,スイッチ2を単独でONした例は省略しました.

 どうです? 問題なさそうですね.ところが実は一つだけ問題があるのです.(c)と(d)の図をよく見て下さい.2つの電池のうち一つしか使われていないことに気付いたでしょうか? (c)や(d)のように2つのスイッチを逆方向にONにしてその場でグルグル回転している時や,(省略しましたが)1つのスイッチだけONして旋回している場合には2つの電池のうちの一方だけが消耗してしまいます.しかし(a),(b)のように前進あるいは後退している時には双方の電池を同時に使うので,この場合は問題なし.まぁ,あまり一方向だけに回転しているとケーブルが絡みつくので,きっと左右均等に回転してくれると期待して,この問題は割り切ることにしましょう.

 最後に,今回の省配線の効果を説明します.

 まずリモコン側の配線がとても少ない.簡易的に端子の数を配線数として数えると,(a)は10,(b)は7ですので,3つ少ない.これは見ただけでも分かりますね.
 大きな違いはスイッチの種類です.(a)では2回路入りの6Pスイッチが必要なのに対して,(b)は1回路入りの3Pスイッチで構いません.コストダウンですね.
 更に当初の目的の一つ,リモコンからモータへの配線数は(a)の4本に対して,(b)は3本.これ以上少なくすることは無理でしょう.

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